近道、寄り道

歳末の住宅街。

12月29日。夕方近くに家を出て、いつもの駅とは反対方向にぐんぐん歩いた。家々の間を抜けていくと、窓を拭く人や、庭を掃く人の姿。キーンという掃除機の音もたまに聞こえてくる。しめ縄飾りがでているかどうかで、正月準備の進捗が見え、ちょっと楽しい。大掃除の気配は、新年の気配だ。

しばらくすると急に視界が開ける。大きな道路と、マンション、そして広い墓地。母から教わったこの近道を使うのは2度目だ。

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わたしは手ぶらで墓地の表門をくぐり、幹線道路の真下に抜ける裏門を目指した。ただその前に少しだけ寄り道を。祖父母がここの霊園に眠っているのだ。せめてお線香を持ってくれば良かったと反省しつつ、暮石の前で手を合わせた。

祖父母に一礼して墓地を出て、幹線道路を超えた先の農家直売市場を目指す。その夜は今年最後のお客さんがやって来る日で、せっかくなら地元の野菜で鍋をしようと思ったのだ。買い物ついでのお墓参り。いい加減な孫だけど、うちのおじいちゃんなら手を叩いて笑いそう。「そりゃ一石二鳥でいいな。よっ、さすが孫長!」とかいいながら。

信号待ちをしていると、ゴゴゴゴーーーッと大きな音をたてて電車が足元を抜けていった。祖父が亡くなってすぐの頃、お墓参りのたびに、幼い従兄弟がフェンスに張り付き、あの電車を見ていた。乗り物好きの従兄弟はいまや航海士で、きっと今もどこかの海の上。

みんな大人になったなぁ。と、感慨に浸りつつ、帰りは遠回りの道を選ぶことにした。

節目の一年が終わる。

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